はじめに
こんにちは、もも助です。
今回は染井為人さんの書かれた、「悪い夏」を読んだので、感想を残したいと思います。
この本を読んだきっかけは、書店にてこんな不穏なオーラを放っている小説を見たことがなかったからです。
ホラー調のフォントに悪い夏と書かれた表紙、いかにも嫌な展開が待っていそうです。
一部ネタバレ注意です。
あらすじ
26歳の守は、生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをちらつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して・・・。
生活保護を不正受給する子悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出をもくろむ地方ヤクザ。加速する負の連鎖が守を凄絶な悲劇へ叩き落す!
文庫裏あらすじより
真面目だった主人公の守が、次第に変わっていき・・・と、展開としてはよくある感じですが、読んでみると夢中になって一気に読んでしまう話です。
現代社会の闇を風刺しているかのような描写に、感情を揺さぶられ、社会について考えさせられます。
感想
生活保護の不正受給
この小説の主題でもある生活保護について。
現実世界でも生活保護の不正受給はあるみたいですね。なのでこの小説の話はすべてがフィクションではないということです。恐ろしい。
生活保護を受けるべき人が保護を受けられず、ずるがしこい人が何もせずお金を得ている。個人的にこのポイントがモヤモヤポイントでした。
本当に困っている人を見分けるのは難しいことです。この小説のように隙なく嘘をつかれては、嘘だとわかっていてもどうすることもできません。
ですが、そういった人たちのせいで保護を受けられないという事態は異常ですよね。
現実社会がどうなっているかは分かりませんが、セーフティーネットはセーフティーネットとしてしっかり機能してほしいものです。
育児放棄
話の中で、ヤンキーのママが出てきます。
若くして子供を授かり、結局育てられないという、これまた現実にあり得る話です。
このヤンママが、まだ幼い子供を自分の親に預け、しまいには邪魔者扱いします。
若い時期に子供を授かることを否定するわけではありませんが、一時の過ちで命を存在に扱うのは許されることではありません。
物語の中で、夫を亡くしたシングルマザーが出てきます。その人は懸命に働いているはずなのに子供一人まともに育てられない自分に嫌気がさします。
その結果犯罪に手を染め、抜け出せなくなります。
最後には息子と共に・・・
恋愛
職場での恋愛はそうあるものなのでしょうか。(私の周りではあまり聞かないものでして・・・。)
この小説では恋愛模様についても描かれています。
主人公は生活保護受給者に恋をし、ずっと一緒にいたいと思います。ですがそれはかなわず、不幸な結末となってしまいます。
また、職場で不倫関係にあった男女は、女性の常軌を逸した執着によって破滅へと向かいます。
恋愛は行き過ぎると執着、束縛へと変わっていきます。
親しい仲でも、適度な距離を保つのが幸せでいるコツなのかなと感じました。
よくあるのが、恋人のスマホを見たり、秘密を探ろうとしたり。
もちろん悪いことを隠すのは良くないことですが、いくら彼氏彼女と言っても、プライベートに踏み込むのは控えるのがよいでしょう。大方そういったことから別れにつながりますから。
ぜんぶ暑すぎる夏のせいだ
タイトル「悪い夏」の通り、舞台は真夏です。
記録的な猛暑が続く中、主人公の守は外回りを続けます。
体に異変を感じながらも、どうすることもできずただ日常が続きます。
皆さんは夏は好きですか?
夏と言えば海や花火、祭り、スイカ、キャンプ・・・楽しいイメージがたくさんありますよね。
その反面、身体を燃やすような暑さが付きまといます。
私は夏は好きですが、この小説を読んで夏のイメージに「鬱」が加わりました。
これも全部夏の暑さのせいです。
「悪い夏」染井為人
「悪い夏」の感想でした。
現代社会にはびこる問題を取り上げている点や、夏の暑さといったイメージしやすい嫌な感じが、この小説の最低でゲスな部分を引き立てています。
この本を読みながら、「正しさとは何か」を考えていました。
私なりに答えを探してみましたが、結論としては「この世に本当の意味で正しさは存在しない」ということでした。
誰かの正義は、誰かの悪です。何が本当に正しいかなんて、自分の置かれた立場や状況によって変わります。なので考えるだけ無駄なのかなと。
たまにはこういう鬱小説を読むのも楽しいですね。
湊かなえさんの作品もよく読みますが、それとはまた違ったイヤミスです。
皆さんもぜひ読んでみてください。
もう読んだという方は、下のコメントから感想を教えてください!
以上、もも助でした。
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